法人であれば使える節税策としてのアメリカ不動産

 令和2年税制改正大綱により、来年(2021年)から、海外不動産投資を個人で所有し、所有から4年間発生する減価償却を個人所得から差し引くことで節税することができなくなります。しかし、これは個人に関することで、法人では節税スキームとして依然として使うことができます。

 減価償却費を計算するには、法定耐用年数という値が必要となります。法定耐用年数とは、減価償却が適用される期間のことで、財務省が資産ごとに決めています。日本では、木造建物の法定耐用年数は22年と定められています。このため、新築の木造建築を購入した場合、22年間は減価償却費を経費として計上できます。

 ところが、築22年を超えた木造建築の耐用年数は、すべて4年となります。

 アメリカの建物は、たとえ木造建築であっても寿命が日本よりも長く、築22年を超えたとしても建物の購入価格や家賃が下がりにくい傾向にあります。そのため、築22年以上の海外木造建築を購入した場合、4年という短期間でたくさんの減価償却費を経費として計上して、課税所得を小さくすることができます。

 しかもアメリカの不動産は、物件価格全体に占める建物の割合(建物比率)が高い傾向にあります。日本での建物比率は20%程度ですが、アメリカだと80%程度あります。

 減価償却は建物のみに対して適用されます。このため、同じ物件価格でも日本よりアメリカの物件の方が減価償却が大きくなり、節税効果も大きくなります。

 例えば5,000万円の物件を考え、建物比率は日本が20%、アメリカが80%とします。この場合、日本の物件の減価償却費は4年で1,000万円(5,000万円×20%)となり、年間だと250万円になります。

 一方、アメリカの物件の減価償却費は4年で4,000万円(5,000万円×80%)となり、年間1,000万円となります。

 法人の実効税率を42%としますと、日本だと年間105万円(250万円×42%)の節税となりますが、アメリカだと年間420万円(1,000万円×42%)となります。物件価格は5,000万円でしたので、節税効果は8.4%(420万円÷5,000万円)となります。

他の節税策(航空機リースと保険)との比較

 法人の節税市場は、年間約3兆円と言われており、そのうち8割が航空機オペレーティングリース(航空機リース)と保険だそうです。しかし航空機リース、保険ともに税制改正によって節税効果が縮小しています。例えば、航空機リースの場合、以前は融資で支払った金額も償却費として認められていましたが、現在では現金で入れた部分だけが償却費の対象となります。保険では、全額損金となるのは最高解約返戻率が50%以下のものが対象となり、解約返礼率が高いものが損金になる部分は段階的に制限されることになっています。

 また航空機リースは、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、航空会社の破綻リスクが高まっており、リース料の不払いや売却時の価格下落リスク、流動性低下リスクが高まっています。

 そもそも航空機リースも保険も、節税といっても税金の繰り越しに過ぎず、何らかのインカムリターンを生み出すわけではありません。一方、不動産の場合、家賃というインカムゲインが発生しますので、税金の繰延をしている間に、インカムゲインで繰越した法人税分をカバーすることができます。

節税対策としてアメリカ不動産を保有するための2つの準備

 節税対策としてアメリカ不動産を保有する際には、以下2つの準備をしましょう。

(1)圧縮する利益額を計算する

 仮に毎年1億円の利益を圧縮したいのであれば、5億円のアメリカの物件を購入することになります。アメリカの物件の建物比率を80%とすると、4億円(5億円×80%)が建物部分となり、毎年の減価償却費は1億円(4億円÷4年間)となるからです。

 圧縮したい利益額が決まれば、以下の式をつかって、物件の購入額が計算できます。

物件の購入額=圧縮したい利益額÷アメリカの建物比率(80%)×4(減価償却の耐用年数)

(2)融資額を決める

 アメリカに限らず不動産物件を購入する際、融資を利用すると資金効率が高まります。たとえば、物件購入額の50%に相当する額の融資を得ることができれば、必要とする手元資金が少なくなり、余った資金を他の投資に使うことでより多くの利益を得ることができます。

 融資を得るための担保は、様々なものが考えられます。購入するアメリカの不動産物件を担保にすることも考えられますが、日本の金融機関は、海外の不動産物件を担保として認めない傾向にあります。この場合、日本にある他の不動産物件を対象に第2順位以下の融資をえることも考えられます。一般的には、余力担保の8割ほどの融資は可能です。また、保有株を担保にする方法もあり得ます。

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